業務自動化(ビジネスオートメーション)で運用されている「自動化ジョブ」(自動化された業務フロー、タスク、プロセスのこと)を実行するには、概ね、①ユーザーが直にそのジョブを開始させるか、②スケジューリングによるジョブの自動実行、③イベントトリガー(例1:データの更新。例2:規定のアプリ接続のコネクター、例3:自動化プラットフォーム上での機能連携など)の設定によってジョブを自動で実行させるほか、④外部アプリからのAPI連携だけで「自動化ジョブ」を実行させるなど、様々の方法があります。さらに⑤生成AIの進歩により、API連携機能まで生成AI側で吸収し、自然言語だけで自動化ジョブを実行させる時代になっています。

ビジネスオートメーション世界で熱くなっているキーワードの中では、生成AIや、AI搭載のIDPなどを使った、ちょっと優雅なオートメーションもあります。特に生成AIをベースとしたコパイロット(CoPilot)やオートパイロット(AutoPilot)などの製品機能は、業務自動化の目指すべき方向を牽引しています。

このページでの各デモ動画は、優れたAIが搭載された製品機能を紹介するものではありませんが、ハイパーオートメーションとして、上記③~⑤のジョブ実行方法や生成AIとの連携機能を中心に、ちょっとインテリジェントなオートメーションが確認できるデモ動画を順次に紹介してみます。

1. チャットボット(Line)からUiPathの「自動化ジョブ」実行のデモ

・ウェブサイトのお問い合わせフォーム画面に自動入力

ユーザーが、「自動化ジョブ」を実行したいタイミングで、外部から実行指示を行うことが可能です。例えば、メールなどの定番のコミュニケーションツールを使い、メールを送信するだけで、メール受信側での、「自動化ジョブ」が実行されるなどが考えられますが、これは既に今時の一部業務自動化プラットフォーム製品の製品群内で実現できるサービスです。

でも、独立した外部のアプリから、社内で運用されている「自動化ジョブ」を実行させることも可能です。次の動画は、ライン(Line)からのチャットでAPIを通じ、「自動化ジョブ」を実行させるデモ動画です。デモ動画に必要な作業として、ライン(Line)側の設定、チャットボットサーバー(デモ用としてGoogle Dialog Flowダイアログフローを利用)での設定、ウェブフック(Web Hook)専用サーバー(デモ用としてノートPC側に設定)での実装や設定、UiPathを使った「自動化ジョブ」の実装やUnAttendedRobot/Orchestratorの設定などを行いました。

このデモの自動化シナリオは、
Line(ライン)に記入した内容や事前登録済の共通入力内容に基づき、企業ウェブページの問い合わせフォーム画面に自動入力してくれます。

1.Lineからのチャット指示に従い、答える。

2.Line上の最後の質問への回答を出したタイミングで、記入した内容を入力引数とし、自動にロボット側にRPAプロセスの実行指示を行う。

3.Line側では、RPAロボットからの実行結果内容を戻り値として受け取り、ユーザーに表示する。



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2. UiPathロボットとOpenAIファインチューニング機能連携のデモ

・検索キーワードでフィルタリングしたニュースを自動収集し、自社に有益なニュースか有害なニュースかを自動判定

RPAは、オートメーション世界ではアクションの自動化と言われ、人の体に例え、手と足の役割をするとも言われてきました。ですので、判断の自動化、即ち脳の役割をするとも言われるAIとの連携はずっと進歩しながらオートメーションの課題分野とも言われてきました。UiPathのような製品は、既にRPA製品とは言えなくなり、AI実装はもちろん、ハイパーオートメーション、セマンティックオートメーション、ビジネスオートメーションプラットフォームなどの役割を果たすプラットフォーム製品として、オートメーションの未来を開き、それを実現してきました。

ここでは、UiPathと生成AIのチャットGPT(Chat GPT、OpenAI)との連携で、手軽にAI連携の特定業務の自動化を図る例を紹介します。このデモ動画に必要な作業として、UiPath Studioを使った「自動化ジョブ」の実装やAttendedRobot/Orchestratorの設定、各OpenAI連携に必要なAPI関連実装などを行いました。

OpenAIとの連携に使われた機能は、
1.OpenAIファインチューニング(Fine-Tuning)モデルを登録するまでの各作業をUiPath側で行う。
  ①ヒューショットする学習データ(100個余り)の登録
  ②登録した学習データを持ってモデルのファインチューニング
  ③モデルのファインチューニング完了までの進捗確認
  ④精度(Accuracy)、Train Loss率などの確認
2.ファインチューニングされたモデルの使用をUiPath側で行う
  ・自動化シナリオにより、データ収集や業務ロジックなどはUiPathで行う。
  ・ロジック範囲以外の結果判断部分は、OpenAIから判定してもらう。

このデモの自動化シナリオは、
Orchestrator Asset上に事前登録済の企業名や検索キーワードに基づき、ニュースサイトからニュース一覧を抽出します。企業の評判や株価に影響が出る内容があるか、いち早く把握できることを目的とします。抽出したニュース一覧から各ニュースに対し、独自の業務ロジックによる判定やChatGPT(OpenAI)からの判定を纏め、Excelファイルに保存した後、ユーザーに届きます。

1.Googleニュースから、企業名や検索キーワードに該当するニュース全てを抽出する。

2.抽出した各ニュースに対し、独自の業務ロジックに基づき1回目の判定を行う。

3.次は、該当ニュースに対し、OpenAIのモデレーション機能に基づき2回目の判定を行う。

4.さらに、企業によっては、該当ニュースがポジティブかネガティブかの判定基準が主観的であることから、別途判定ができるOpenAIのファインチューニングモデルに基づき、3回目の判定を行う。(事前に、必要な学習データを作成の上、OpenAI側にファインチューニングモデルを登録しておく必要がある。)

5.上記判定結果をExcelファイルに保存する。




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3. Power AutomateからChatGPT(チャットジーピーティ)画面制御のデモ

・毎日受信メールから、案件情報と人材情報を自動で切り分け、案件別にマッチングする人材情報を自動で一覧化。

Power Automate(パワーオートメイト)を使い、単純にChatGPTのウェブUI画面への操作を自動化する作業をデモ用として作成してみました。自動化という側面では、ただのウェブ画面の制御という単純なデモになりますが、業務の側面では、ChatGPTというAI機能を使い、最終的な判断や結果を出してもらえることになりますので、ChatGPT側のAPI仕様は使わず、単純なRPAのデモとはいえ、使い道によっては、面白いと思います。

このデモ動画に必要な作業として、Power Automate Desktop(PAD.パワーオートメイトデスクトップ)を使った自動化業務フローの実装やPower Automate(パワーオートメイト)のクラウドフローの設定などを行いました。

このデモの自動化シナリオは、
まずはOutlookの受信メールの中から、IT人材の提案メールや開発案件紹介メールを抽出し、それぞれファイル(内容、スキルシート)への保存を行います。次は、各案件別に必要な要件を満たす人材情報をフィルタリングし、そのマッチング結果をExcelファイルに保存し、ユーザーに届きます。

1.Outlookの受信メールの中から、IT人材の提案メールや開発案件紹介メールを抽出する。

2.それぞれ、メールの内容はテキストファイルに保存し、人材情報に添付されていたスキルシートファイル(例:Excel,PDFなど)を特定フォルダに格納する。

3.上記2の各ファイルを、案件情報や人情報報に分け、二つのZIPファイルとして圧出する。

4.ChatGPT画面を開き、上記3のファイルをアップロードする上、案件情報に該当する人材情報を探し、そのマッチング結果をExcelファイルに保存し、ダウンロードできるようにする。




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4. UiPath Apps(ローコード/ローコードツール)・UiPath Robot・OpenAI(チャットジーピーティ)の連携デモ

・生成AIを通して、各国の番組ジャンル別に、過去10年間人気のあったTop5の番組情報やその人気の理由を調査する作業を、ローコードアプリ画面で行う。

ローコード/ノーコードツールとして、UiPath Appsを使い、デモに必要な簡単なウェブ画面を作りました。このUiPath Appsのアプリから、UiPathのロボットにStudioで実装した「自動化ジョブ」を実行させますが、その実装内容としては、必要なプロンプトテキストを持ち、OpenAI(ChatGPT)からの応答を求めました。

このデモ動画に必要な作業として、UiPath Automation Suite上で、UiPath Appsのアプリ作成、Integration ServiceにOpenAI接続用のコネクタ登録UiPath Studioでの「自動化ジョブ」の実装(コネクタを使いOpenAIに接続した上、プロンプトの引き渡しや応答結果を受け取るフローの実装)を行いました。接続以外のOpenAIとのAPI連携部分は、単純にUiPath Studio内の関連アクティビティを使いました。

このデモの自動化シナリオは、
各国の番組ジャンル別に、過去10年間人気のあったTop5の番組情報やその人気の理由を教えてもらうことが目的です。

1.UiPath Appsアプリ画面で、国名を選択、番組ジャンルを選択し、検索ボタンを押す。

2.検索内容をUiPathロボットが受け取り、OpenAIへの接続や会話指示機能が実装されているRPAプロセスを実行する。

3.OpenAIの応答メッセージをUiPathロボットが受け取り、さらにUiPath Appsアプリ側に引き渡す。

4.UiPath Appsアプリ画面の結果表示欄に、OpenAIの応答メッセージを表示する。




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5. Power Apps(パワーアップス)・Power Automate(パワーオートメイト)・OpenAI(チャットジーピーティ)のFunction Calling機能連携のデモ

・特定都市名や確認したい日の天気情報を参考にした上、当日の行事開催が可能か否かの見解を生成AIから取得する作業を、ローコードアプリ画面で行う。

ローコード/ノーコードツールとして、Power PlatformのPower Apps(パワーアップス)を使い、デモ用の簡単なアプリ画面を作りました。このPower Appsのアプリから、Power Platformのロボットに「自動化ジョブ」を実行させますが、その実装内容としては、検索先となる機能(Function)を、OpenAI側に任さずクライアント側にFunction(ファンクション)として実装し、必要なプロンプトテキストとこのFunctionを一緒に、OpenAI(ChatGPT)に送信する仕組み(OpenAIFunction Calling機能使用)で実装してみました。

このデモ動画に必要な作業として、Power Appsのアプリ作成、Power Automateクラウドフローの作成、デスクトップフローの実装、OpenAI(ChatGPT)との連携用のPythonコード作成などを行いました。OpenAIのAPI使用料以外は、無料バージョンを使ってみましたので、Power Platform側でのカスタムコネクタ機能などは使えず、多少無駄な実装を増やして実装しました。

このデモの自動化シナリオは、
APIを無料公開している天気情報サイトから、事前指定の都市名や確認したい日に対する天気情報を参考にした上、当日の行事開催などの相談内容を入力し、生成AI(OpenAI)から見解を取得するシナリオにしてみました。

1.Power Appsアプリ画面で、都市名、照会対象日、相談内容を入力し、送信ボタンを押す。

2.Power Automateのクラウドフローから、OpenAI連携部分の実装が含まれているデスクトップフローを実行する。

3.OpenAIのFunction Calling機能を実装したPythonコードが呼び出される。

4.OpenAIの応答メッセージをPower Automateのデスクトップフロー⇒クラウドフローが受け取り、さらにPower Appsアプリ側に引き渡す。

5.Power Appsアプリ画面の結果表示欄に、OpenAIの応答メッセージを表示する。




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6. Power Apps・UiPath StudioX・OpenAIのAssistants(アシスタント)機能連携のデモ

・生成AIを通して、国土交通省の不動産取引情報を基に、過去の特定地域の不動産取引情報を検索したり、今後の不動産取引の推移を調査する作業を、ローコードアプリ画面で行う。

フロント側の画面は、Power PlatformのPower Apps(パワーアップス)を使い作成し、業務ロジックの実装はUiPath StudioXを利用してみました。APIを通して、この二つのプラットフォーム間の連携を行っているので、Power Platformのカスタムコネクタを使い接続に必要な設定をしてみました。

UiPath側で実装した業務ロジックとは、最終的な結果を取得する為に使うOpenAI側への入出力や、各機能別の切り分けなどを実装しました。

OpenAI側では、Assistants(アシスタント)に、ファイルアップロード/Code Interpreter/Retrieval(File Search)などの設定を行い、自動化シナリオで検索元になる主なデータファイル(国土交通省の不動産取引情報)は、OpenAI側に格納されます。

このデモの自動化シナリオは、
生成AI(OpenAI)に国土交通省の不動産取引情報を分析してもらい、その取引情報を基に、検索や予測などを行った結果を取得する目的です。過去の不動産取引情報ファイルを更新/管理する為に必要な操作(検索、データ更新、検索機能無効設定)もローコード(ノーコード)ツールを使い実装しました。

1.Power Appsアプリ画面で、3つの選択肢([検索]、[データ更新]、[検索機能無効])から[検索]、都市名を選択し、相談内容を入力した後、送信ボタンを押す。
 ・[データ更新]は、OpenAI側に国土交通省の新しいファイルをアップロードし、Assistantsに更新ファイルを反映する機能で、[検索機能無効]は、しばらく使わない場合OpenAIのAssistantsとのファイルリンクを解除する機能(課金対象から外す)

2.上記3つの選択肢毎の業務ロジックが実装されている、UiPath(Studioで実装、UnAttendedRobot実行)ロボットが、Power Platformのカスタムコネクタ上でのAPI設定によって、呼び出される。

3.UiPath ロボットからOpenAIのAssistantsに上記1項の入力情報を渡し、結果を取得する

4.Power Apps側に結果が渡され、そのアプリ画面の相談結果欄に表示される。




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